阿含経と密教

仏陀の持つ神通の力(超能力)について 

釈尊が持たれたという、神通力は多くの修行者があこがれる超能力です。管理人も若かりしとき、超人的な能力にあこがれて、仏道修行に入りました。

神通力は、釈尊や十大弟子を始めとした阿羅漢・仏陀となった方々の現された超能力ですが、この超能力についで『ひの出版室ホームページ』雑阿含経12208『目連所問経』から、どうのようにして獲得されたか見てみましょう。十大弟子で神通第一と言われた大目犍連尊者が、天眼第一といわれた阿那律尊者に、どのようにして天眼通を得たのか尋ねます。

「何の功徳に於て修習し多く修習せば、此の大徳神力を成ぜると。尊者阿那律、尊者大目犍連に語るらく。
 我、四念處に於て修習し多く修習し、此の大徳神力を成じたり。」と、四念処観を修習して神力(神通力)を成じたのだという。七科三十七道品の四念処観の修行により、天眼第一という神通力を得たというのです。

この四念処観は、ある意味あこがれの修行法ですが、やってみたけどよくわからないというのも実際だと思います。このため、「内」と「外」、さらに「身」について、あらかじめ理解しておく必要です。また、四念処の「四」、「念」、「処」については、『四念処観と七覚支による解脱システム』をご参照ください。

「外」とは表面意識で動いている心のことで、五受陰あるい欲念・恚念・害念として阿含経ではあらわされる。「内」は無意識レベルの脳と心の動きのこと。

例えば、人に何か言われると反発する心が生じる方が多いと思います。この時、相手に対し、恚り、あるいは瞋りの心を生じ、それを外に出してしまっていると思います。これが、「外」の脳と心の動きです。この「外」は身受心法の四つの「内」である無意識層から、表面意識にでてきたものなのです。

「身」は、「身見」の身ですが、阿含経では「欲念」といわれます。これは、獣の時代を生き抜くために必要だったわけですが、動物として子孫を残す、あるいは食料を確保して自らと子孫を護ろうとする強い欲のことです。子育て中のカラスの巣の付近に近づくと、人を恐れずに攻撃してきますが、これが欲念の表れとみて良いのではないかと思います。

また、この欲をお釈迦様は「無明」と名付けられていると、阿山師は記されています。

さて、言葉を理解していただいたところで、四念処観について、管理人のつたない体験も踏まえ見てみましょう。

① 身観念処
「外身」は、表面意識で動く悪不善の心で、それを観察し制御できるようになり、悪い心癖が生じると、その瞬間にわかり、離れることができる。このことで、「須陀洹」という聖者の第一段階にはいる。

また、「外受」の表面意識の動きから離れることができることから、「内身」の「欲念」から生じる、苦、楽、不苦不楽受について、観察できるようになる。

② 受観念処
「外受」は、人から何か言われたことから生じた「苦受」の解決策として、瞋恚を生じて解決しようとしますが、表面意識に瞋恚が生じた瞬間に気づいて、この心の動きから離れることができるようになっていますので、「苦受」の原因である「内受」に目を向けることができます。

「内受」は、「タンハー・愛」が満たされないことから生じる苦受(苦、楽、不苦不楽受)のことで、その脳と心の動きから離れることができるようになります。これが薄らいで「斯陀含」の境界に至ることになろうかと思います。

③ 心観念処
三亊和合して「タンハー・愛」を生じるのですが、このタンハーからストレス感が、表面意識に漏れ出てきます。これは雑阿含経『甚深経』に説く「憂苦・悔恨・埋没・障礙」といわれるわずかなストレス感ですが、このストレス感が消えるとのこと。このストレス感は、過去世の記憶である有結により生じたものです。

管理人の場合は、過去世にて「梯子を外された」事があったのではないかと思うことがあります。ここから様々の有結を生じているようです。

この段階で「阿那含」となり、過去世の記憶(有結)を観察に行くことになりますので、宿命通の神通力を自然に得ることになるようです。

④ 法観念処の成就で阿羅漢
この第四段階では、ヒトの持つ執着がタンハーを生じていることを観察し、この執着を離れ、断じる修行となります。この執着は、掉慢無明と阿山師が呼ばれている、現在は成就できていないが、将来(来世)必ず達成できると執着して輪廻転生していますが、この輪廻転生からの解脱が可能となります。

この結果、阿山師は、「動物の欲に対する執着(無明)と、前世から持ってきた愛(タンハー)に対する執着(掉慢無明)がともに滅尽」しているのが阿羅漢であるとされ、また、

「自分が生まれてくる原因になった、過去世の記憶と抑圧が消えているように感じるとのことで、漏尽通の神通力がこの段階の修行で自然と得られます。

また、阿羅漢になると、周囲にある草花や木、石などに宿り、また周囲の霊魂や神仏の魂のバイブレーションと力が、自分の脳と心に入ってくるとのこと。これらの情報は五感を経由しないで直接脳に入って来て、未来の情景も入ってくるとのことです。つまり天耳通や天眼通の通力が自然と備わってくる」とのこと。


わたくしたちは、この超人的な能力を得る修行がまず先にあると考えています。ところが、どうもそうでは無く、解脱の修行をしていく過程で自然と備わってくる能力のようなのです。

漏尽通という通力は、阿那含となり第四段階の阿羅漢・仏陀に向かうとき、前世、またその前世と、過去世での辛かった記憶、タンハーと有結を観察に行きます。この修行の過程で必然的に必要となる能力であるのです。

 


参考までに:『ひの出版室ホームページ』より「三明六通」について

漏尽通 現在の脳と心の状態を知り、漏を尽くします。

宿命通 過去世の境涯を知り、愛(タンハー)が存在する所以を知ります。

天眼通 現在の自分や人々の心の状態を見て、将来どの様に変化するかを観察し、未来世の境涯を知ります。

他心通 他人の心を知り、心の状態にあった解脱施、捨施を為すことが出来ます。

天耳通 世間の声、すなわちどの様な情報も素直に耳にすることが出来、人々に正しい対応を知らせることが出来ます。

神足通 神の如く自在に、心を望むところへ動かして、そこにある姿を知り、為すべき所作を知ることが出来ます。

 

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