あふれるような慈愛のエネルギー ひの出版室 

 

あふれるような慈愛のエネルギー

 慧ある人は自害を念ぜず他害を念ぜず 中阿含経 心経より

平成29年4月18日 阿山恭久記す(平成29年4月30日 改訂C..)

 お釈迦様が説かれる聡明で慧ある人とはどんな人でしょう。
いくら頭が良くても「慧」があるとは言えないらしいのです。脳の中に詰まっている知識や学問の量、また情報の処理能力の問題でもないらしいのです。求聞持聡明法によって得られる脳でもなさそうです。

 お釈迦様が伝えられる、聖者の脳と心が持つ力を、著者 阿山恭久は、「あふれるような慈愛のエネルギー」と呼んでいます。 お釈迦様からやってくるバイブレーションは、[慈愛のエネルギー]であるのです。

 「慧」とは「あふれるような慈愛のエネルギー」である。この仮説に基づいて、中阿含経 心経を読みにゆきます、「慧」と「あふれるような慈愛のエネルギー」は同じものでしょうか。

(タイトル以外の太字の部分は 国訳一切経印度撰述の部阿含の部 大東出版社 から引用しています)

聰明で慧ある人とは

 中阿含経 心経で「慧」と記述されたフレーズを「智慧」と翻訳するのは適切ではありません。私達が「智慧」と言うフレーズからイメージするものと「慧」とは全く違うのです。お釈迦様の「慧」は「慈愛」から出てきます。

 「聡明」とは」何か。聡( すべ)て明るいという。お釈迦様の世界の聡明は、二つの無明、すなわち動物の欲の無明と掉慢無明を離れていることを示しています。
(仏陀に学ぶ脳と心第5巻「掉慢無明を捨離す」に解説された「明解脱」に相当します。)
もう少し端的に表すと「我(が)」が無くなっているのです。

中阿含経 心経より

問ひて曰く。
「世尊、聰明の比丘黠慧廣慧あるもの、聰明の比丘黠慧廣慧あるを説く。
世尊、云何が聰明の比丘黠慧廣慧ありや。云何が聰明の比丘黠慧廣慧ありと施設するや。」

質問を致しました。
「お釈迦様、「聡明な(二つの無明から離れて、我(が)と執着がない)修行者であって、深くゆき届いた慈愛(黠慧)と、大きく廣がりがある慈愛(廣慧)をもつものだけが「聡明な(我(が)と執着がない)修行者であって、深くゆき届いた慈愛(黠慧)と、大きく廣がりがある慈愛(廣慧)」を説くことが出来ます。お釈迦様、「聡明な修行者で、黠慧廣慧ある」とはどのようなことですか。どのようであれば、「聡明な修行者で、黠慧廣慧あり」といえますか。」

 「聡明な(我(が)と執着がない)比丘が持つ、深くゆき届いた慈愛(黠慧)と、大きく廣がりがある慈愛(廣慧)」について、普通の人はこれを理解することも説くことも出来ないという。聖者の慧は、普通に考えられる智慧と名づけられたものとは質が違うのです。「慧]を分かっていない人には「慧」を語ることが出来ないと言うのです。

世尊聞き已りて歎じて曰く。
「善き哉善き哉。比丘、謂ゆる賢道有りて而も賢觀有り。 極妙の辯才有り、善思惟あり。
「世尊。云何が聰明の比丘黠慧廣慧ありや。 云何が聰明の比丘黠慧廣慧ありと施設するや。」
比丘よ。問ふ所是の如きと爲す耶。」 比丘答へて曰く。「是の如し世尊。」

お釈迦様はこれを聞かれて誉めておっしゃいました。
「素晴らしい質問ですね。修行を志す者よ。いわゆる賢くなる道を歩んだ人は普通の人にはない賢いものの見方ができるのです。あなたは極妙の辯才があって善い考えを為すことが出きるのですね。
「お釈迦様、どのように、聡明な修行者は、深くゆき届いた慈愛(黠慧)と、大きく廣がりがある慈愛(廣慧)がある」のですか。どのようであれば、「聡明な修行者が黠慧、廣慧がある」といえるのですか。」
修行者よ、あなたの質問はこれでよろしいですか。」
修行者は答えました。 「そのとおりです。」

自分も他人も、害することを念じない

世尊告げて曰く。
「若し比丘、自害を念ぜず、 害他を念ぜず、 亦倶害を念ぜず、

お釈迦様はおっしゃいました。「もし修行者が、自分を害することを念じず、他人を害することを念じず、自分と他人を倶に害することを念じないならば、

自分を害するとは

「自害を念ぜず」とは何のことでしょうか。阿含経典には「欲念・恚念・害念」というフレーズがあります。
 動物の欲の無明、欲念があるのに自我を護ることができないと、恚念(いかり)を生じ、自我を護るために害念(周囲のエネルギーを阻害する)の心の向きが生じてしまいます。害念すなわち、「自害を念じ、 害他を念じ、 また倶害を念ずる」心のむきがある人は、愚かであるというのです。 どのように愚かなのか。

 自分を害することに心が向いており、他人を害することに心が向いており、自分と他人と両方とも害してしまうことに心が向いている。

 害するとは何か。
① 不満を言い、②人を責め、③嫉妬し、④威張り、⑤自分の偉さを求め主張し、⑥人を馬鹿にする。
 この様な心を害心といいこの心の向きを害念といいます。自分の強さ偉さを保とうとして為される、いわゆる猿の心です。
 自分を害するとはどういうことでしょうか。自分の有り様を不満に思い、自分を責め、馬鹿にされたと思い、自分は強くも偉くもないと落ち込むのです。慧ある人はこの様なことをしないのだと説いています。
 自分だけでなく周囲の人などにも、不満を向け、責め、嫉妬し、馬鹿にしたりしないのです。
 慧ある人は 「自害を念ぜず、 害他を念ぜず、 亦倶害を念ぜず」すなわち慈愛のないことはしません。

多くの人を豊かにする

比丘但自ら饒益し 及び他を饒益するを念じ、 多人を饒益するを念じ、

修行者よ,ただ、自分の心を豊かにして役に立つことを念じ、他の人の心を豊かにしその人が役に立つことを念じ、多くの人々の心を豊かにしその人達が役に立つことを念じ、

  (饒益する 豊かにする,利益になり役に立つこと)

  雑阿含経十力経に高い境涯を目指す人に向けて心の使い方を説いた言葉があります。 「まさに自らを利し、他を利し、自他ともに利せんと観じ精勤して修学すべし。」という。

 「利」とは何か。字通を引くと、①するどい、すばやい、よい、②かなう、なめらか、とおる、③さいわい、冨、もうけ、むさぼり、利益、④はたらき、いきおい、かつ、まさる、 とあります。
 願いがかなう勢いのある抜群の行動力と実現力が見えてきませんか。
  自らを利しとは、自分の愛(タンハー)を満たすことではありません。愛(タンハー)を満たすと新しい苦の縁を生じてしまいます。苦は滅してゆかなければなりません。 他を利しも、同じ様に他の人の愛(タンハー)を満たすのではなく、周囲の人の苦がなくなり、新たに苦が生ずることがなく境涯が高くなるようお手伝いをするのです。
自他ともに利せんとは何か。いつでも自分と周囲の双方が倶に穏やかな心でいられるよう心を使います。 多くの人の心を豊かにするのです。

世の安穏を求める

世間を愍傷し、 天の爲人の爲義及び饒益を求め、 安隱快樂を求むれば、

世間の苦しみを愍れみ、これに心を傷め、天の為、人の為に正しくよいあり方と、豊かな心になることを求め、安穏で快よく楽しい心になることを求めれば、

この様な修行者を聡明という

比丘よ、 是の如く聰明の比丘黠慧廣慧あり、 是の如く如來、聰明の比丘黠慧廣慧ありと施設す」
比丘白して曰く。 「善き哉善き哉。唯然り世尊。」
彼の時、比丘佛の所説を聞き善く受け善く持し、善く誦習し已りて、即ち坐從り起ちて佛足を稽首し繞三匝而て還りぬ。
彼の時比丘、佛の所説を聞きて歡喜し奉行しぬ。
    中阿含経百七十二 心經より「黠慧廣慧」

修行者よ、この様な人を「我(が)がなくなった聡明な修行者であって、黠慧、廣慧がある」といい、このように如来(お釈迦様)は「聡明な修行者と、黠慧、廣慧」を定義します。」
 修行者は申し上げました。「素晴らしいことです。ほんとうにその通りだと思います。お釈迦様」。この時、修行者はお釈迦様がお説きになったことを聞いて、善く受け止め、善く身につけ、何度も繰り返し唱えて心に刻み、座より立って佛足を稽首し三回お釈迦様の周りを回って挨拶して還りました。このとき、ここにいた修行者達はお釈迦様のお話を聞いて歡喜し、実践いたしました。

あふれるような慈愛のエネルギー

 「自害を念ぜず、 害他を念ぜず、 亦倶害を念ぜず」は具体的にどのようすれば得られるのでしょうか。

  仏陀 の「慧」である「あふれるような慈愛のエネルギー」を身につけると、ひとりでに成就します。

「あふれるような慈愛のエネルギー」は正に、

「我(が)がなくなった聡明な修行者が持つ、深くゆき届いた慈愛(黠慧)と、大きく廣がりがある慈愛(廣慧)」であり、

「自害を念じ、 害他を念じ、 亦倶害を念ずる」ことがなく、

「但、自らを饒益し及び他を饒益するを念じ、 多人を饒益するを念じ」、

「世間を愍傷し、 天の爲人の爲義及び饒益を求め、 安隱快樂を求め」ています。

 仏陀 の慧の力、「あふれるような慈愛のエネルギー」を言葉で解説しようとすると、このようになるのでしょう。

 けれども聖者の「あふれるような慈愛のエネルギー」、この力に心を向けるときには、もう言葉は必要ありません。

「あふれるような慈愛のエネルギー」の実践では、全ての言葉を忘れて、ただ慈愛のエネルギーだけが力強く存在しているのです。

 聖者の脳と心の姿が見えてきましたでしょうか。

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