涅槃への道 ひの出版室 

 

涅槃への道 中阿含経 慚愧経より②

 平成24年12月13日  阿山恭久 記す

 人が進歩向上するにはどのようになせばよいか。
お釈迦様は凡夫である私達が進歩向上する道筋をお説きになりました。
それは苦しみや悩みから脱出する道筋でもあります。
どのように心がけているとこの道を歩むことが出来るのでしょうか。
 この歩みは自分の心の至らない点を発見することから始まります。
「慚愧経より①」のページは、この歩みの出発点について説かれていました。ここからの「慚愧経より②」のページにはお釈迦様が説かれた修行の終着点「涅槃(ニルバーナ)」に向う道筋が説かれています。

(タイトル以外の太字の部分は 国訳一切経印度撰述の部阿含の部 大東出版社 から引用しています)

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中阿含経慚愧経より

正思惟と正念正智 

解脱へ向う修行は正思惟から始まります。正思惟にもとづいて正念・正智を実践します。ここからいよいよ心を変える作業に取り組むのです。 正念は正思惟によって心の成り立ちと心を変える方法を知って、これに沿って正しく脳と心が動くように心を向け念じます。正念とは「無欲念・無恚念・無害念」を成就することを念じます。
正智は、心の成り立ちと心を変える方法を正しくその意義を知り理解し、心の動きはこれに沿えば寂静に向かうことを知り、寂静が成就している状態を知るのです。

涅槃に向う修行の段階

若し正念・正智無ければ すなはち 護諸根・護戒、 不悔・歓悦、 喜・止・楽・定、見如実・知如眞、 厭・無欲・解脱 を害す。若し解脱無ければ すなはち涅槃を害す。

ここには正念・正智に達した人が涅槃へ向う修行の道筋が示されています。それぞれの段階を一つ一つ見てゆこうと思います。

護諸根と護戒

解脱へ向う修行は正念・正智に達すると始まります。ここからいよいよ心を変える作業に取り組むのです。
正念正智によって心が修行の道筋に沿うようになったら、いよいよ心を変える作業の開始です。
最初のステップは護諸根です。
私達は世の中にある情報「色声香味觸法」を、六つのセンサ「眼耳鼻舌身意」によって脳に送り込みます。
脳内には過去の記憶「眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識」があって、このなかを探し世間からやって来た情報と照合し、相が一致するとこの情報を「受」として脳と心に取り入れます。
(このことは「三事和合」と呼ばれています。)
この情報は脳内にある煩悩や愛(タンハー)の要求に応じて判定され、愛(タンハー)を満たす事象であれば「楽受」、愛(タンハー)を満たす障害になることであれば「苦受」、どちらでもなければ「不苦不楽受」となります。
苦受は「意に適わぬ苦しいもの」と受け止められたのです。
楽受は 「意に適う楽しいもの」と受け止められたのです。
不苦不楽受は「どちらでもない楽しくも苦しくもないもの」と受け止められました。
凡夫の心はこの三種類の受が生ずると、ここから煩悩や愛(タンハー)の求めるところを実現しようと動き出します。これを行(ぎょう)といいます。
護諸根は楽受・苦受・不苦不楽受によって生じた行(ぎょう)が大きな苦しみに育ってしまわないように制御します。心の成り立ちをよくわきまえて正念正智となっていれば、「受」から生じる動きを制御することが出来ます。
この具体的な手法は雑阿含経 諸根修経に説かれています。

護諸根が出来るようになると「護戒」すなわち戒を護ることができます。
戒を護るとは悪い心癖が出ないようにするのです。
怒り、貪り、不満を言う、人を責める、嫉妬し,慢心し、威張る、この様な心の動きが出そうになったらすぐに制御して出ないようにするのです。

不悔と歓悦

戒が護れるようになると「不悔」すなっわち後悔することがなくなります。
後悔することがなければ「歓悦」の喜びがわき上がってきます。
不悔と歓悦によって心は穏やかになり、静かで落ち着いた生活がやってきます。

喜・止・楽・定

心には欲界、色界、無色界の三つの世界があり「三界」と名づけられています。
(仏陀に学ぶ脳と心第三巻参照)
戒を護れるようになって不悔と歓悦がやってきたら、心の欲界・色界・無色の三つの世界に働きかけて順に寂静に近づけて行きます。
喜・止・楽・定は心の三つの世界が寂静になるにつれて、ひとりでに出来るようになる三昧の世界です。
三昧とは、心の中が一つのもの、例えば喜びだけで一杯になっていることを言います。

「喜」は、欲から離れた喜びで一杯になっています。
「止」は心が世間のことに反応することがなくなり静かに住している喜びで一杯になっています。
「楽」は心の奥にあるストレス感が消えて安堵した楽で一杯になっています。
「定」は喜や楽の感覚が消え、心が清浄によって満たされています。

此の四つの三昧は、三十七菩提分の定根に四禅と名づけられて示されています。また七覚分の段階とみることも出来ます。

見如実・知如眞

喜・止・楽・定の心に住するようになると、「見如実」心の中を実の如く見ることが出来、「知如眞」心の姿の真実をそのまま知ることが出来ます。潜在意識の深いレベルまで心をありのままに見、知ることが出来るのです。過去世・現世・未来世の三世に渡る「業と因縁」に関連して動く人生の展開の姿を、実の如くに見、真の如くに知ることが出来ます。

厭・無欲・解脱

ここから解脱の最終段階の完成に向います。「厭・無欲・解脱」の三つの心の完成に向う動きは、「法次法向」と名づけられています。
色界に「厭」を生じ、欲界に「無欲」を生じ、無色界の有漏と愛(タンハー)から「解脱」します。
この三つの心が完成した状態を観察出来るようになるのです。

涅槃(ニルバーナ)へ

「厭・無欲・解脱」を成就して法次法向が完成すると、涅槃(ニルバーナ)に到達します。

まとめ

中阿含経 慚愧経に説かれた心の因縁解脱に向う修行の道筋を概観しました。
それぞれの詳細を知るには、さらに阿含経を学んで実践することがが必要です。

三巻の「仏陀に学ぶ脳と心」にはこの基礎となる概念が解説してあります。
後半の項目については三十七菩提分を学ぶことが必要です。

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