人の心を知る ひの出版室

 

 

人の心を知る 中阿含経 自観心経より①

              平成24年10月6日  阿山恭久 記す

人の心を知りたいと思いませんか。お釈迦様は中阿含経 自観心経のなかで、人の心を知るにはまず自分の心を観察し、自分の心に悪い心癖がないかを知ることから始めるのだと説いておられます。
自分の心の動きが分っていないのに、人の心の動きを見に行くことは出来ないとおっしゃっているのです。
悪い心癖の例を挙げて、このような心癖を無くして過ごせば苦から脱出し阿羅漢に至ると結んでいます。

(タイトル以外の太字の部分は 国訳一切経印度撰述の部阿含の部 大東出版社 から引用しています)

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人の心を知るには

若し比丘有りて善く他心を観ずること能はざれば、當に自ら善く己心を観察すべし。
云何が比丘善く心を観ずるや。
比丘は若しこの観有れば必ず饒益する所多し。

修行者がいて、もし人の心を善く観察できないのなら、
まず自分自身で自分の心を善く観察し知る様にするべきです。
一体どのように心を観察すれば 善いのでしょうか。
修行を志す人は、この見方があるのなら役に立つときが必ず多くあるのです。

自分にはどのような心があるか観察しよう

我多く増伺を行ずと為すや。多く無増伺を行ずと為すや。
我多く 瞋恚心、睡眠纏、 調貢高、疑惑、 身諍、穢汚心、
不信、懈怠、 無念、無定、 悪慧 を行ずとなすや。

(増伺) 私は自分の利を求めて欲の心で動くことが多いのではなかろうか。 多くのときには欲の無い心で動いているだろうか。
(瞋恚心)瞋り(いかり)や恚み(うらみ)の心はどうだろうか。
(睡眠纏)心が不活発で善いことを為すことや、世の中の新しい動きに関心が無く、 眠った様に過ごしている。
(調貢高)自分は優れている、偉いのだ、正しいのだとの思いが強く、 周囲の人に対して高姿勢で接している。
(疑惑) 人を疑い、ものの道理を疑っている。
(身諍) 人と争い、また自分自身の心の中に諍いがある。
(穢汚心)心が穢く汚れている。 (仏陀に学ぶ脳と心第一巻参照)
(不信) 神仏を信じず、因縁因果の法則、ものの道理を信じず、また人を信じていない。
(懈怠) 精進努力することがなく怠けている。
(無念) 自分の心の善悪に注意を向けて観察することがない。
(無定) 心が散乱しており、寂静に保たれていない。
(悪慧) 人を欺くなど、悪智慧を働かせている。

このような心があって日常行動しているのではありませんか。

善くない心があると分ったら治したいと思いませんか

若し比丘観ずる時、 則ち我多く増伺、瞋恚心、睡眠纏、調貢高、
乃至多く悪慧を行ずと知れば、 彼の比丘この悪不善の法を滅せんと欲するが故に、

若し修行を志す人が自分の心を観察したときに、私は日常多く増伺、瞋恚心、睡眠纏、調貢高さらに悪慧までの心の動きを為していると知ったなら、その人はこの悪い心癖を治して滅したいと欲するので、

どのように心を向けて治すのか

即ち以て速かに方便を求め学極めて精勤し、 正念正智にして忍びて退かしめず。
猶ほ人火の為に頭を焼き衣を焼くに、 急に方便を求めて頭を救い衣を救うがごとし。

速かに様々に工夫して心癖を治そうとし、
出来るまで何度も繰り返し練習し努力し勤めて、正しく心を向け、
浄められた心を正しく知って、その状態を保って退かないようにします。
もし、人が火の為に頭を焼かれ衣を焼かれていたら、
あわてて様々に工夫して、なんとか頭を救い衣を救おうとするでしょう、
この時と同じ勢いで悪い心癖を直し滅する作業を為すのです。

心が変わると何が起きるか

是の如く比丘観ずる時、 則ち多く無増伺乃至無悪慧を行ずと知れば、
彼の比丘この善法に住し已りて、 當に漏盡・智通・作證を求むべし。

このように修行を志す人が自分の心を観察する時に、 すなわち多くの時には 増伺から悪慧までの心を以て生活していないと知ったなら、 この修行者は、この善い心の状態を保って過ごし続ければ、そのときには、、
(漏盡) 心の深い所から漏れてくる、前世の思いから生ずるストレス感を滅し解脱に向い、
(智通) 三明六通、漏盡智・宿命智・天眼智・天耳智・他心智・神足智の力の獲得に向い、
(作證) 涅槃寂静(心の因縁解脱)に到達したことを自ら知り、

この三つのことを求めることが出来ます。

私達凡夫であっても自分の心のあり方を知って悪い心癖を治そうと立ち向かえば、解脱に向うことが出来ると説かれていました。
お釈迦様は、今は苦の世界にいる私達であっても、心を変えれば苦を脱出することができるとおっしゃっています。
そのための智慧と技術がここに伝えられています。

衣を蓄えて良いか 自観心経②へ続く

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