阿含経と密教

三事和合 

釈尊の智慧の一つに「三事和合」があります。ヒトの脳が六つのセンサー(眼、耳、鼻、舌、身、意の感覚器官)で外界をとらえ、脳内で処理し、その結果が表面意識に上がってくる脳内処理について説かれたものです。

あくまで、わたくし達の脳と心が対象で、宇宙の森羅万象を対象としていないことにご注意ください。

この三事和合が理解できれば、『尽智経』、『慚愧経』における「正思惟」の「十二因縁、五受陰(五蘊)、四聖諦」の理解が容易となります。

十二因縁
「無明、行、識、名色、六入、触、受、愛、取、有、生、老病死憂悲脳苦」と苦しみが生じる。
三事和合「識、名色、六入」により「触」が生ずる。

五受陰(五蘊)
三事和合して「色陰、色受陰」を生じ、「受、想、行、識」と新たな識(記憶)を作り出す。

四聖諦
「苦、集、滅、道聖諦」。
三事和合して「苦」を生ずる。

 

三事和合は以下となります。

① 外界の景色の三事和合(眼、色、眼識)

外界の景色(外色)を、センサーである眼が捉え、可視光線を、電気信号として脳内に取り込みます。これが脳内で眼に関する記憶「眼識」と反応し、「色」、「色陰」、「色受陰」と変化し、「苦、楽、不苦不楽」受として表面意識に上がってきます。この反応を「三事和合」と言います。

阿含経ではこの色も、色陰も、色受陰もすべて「色」と省略してしまうことがあります。あるいはこれらを「内色」と呼ぶこともあり、わたくし達は混乱することが多い。表面意識に上がってきた色は「外色」とも言われるが、実際に外にある色も「外色」と呼んでいるようですので、混乱してしまいます。

 

② 外界の音の三事和合(耳、声、耳識)

外界の音は、耳というセンサーを経て、電気信号が脳内で認知され、耳識(記憶)に反応して、「声」、「声陰」、「声受陰」に変化し、「苦、楽、不苦不楽」となり表面意識に上がります。

外界の色(景色)はかなりの長時間存在するので、「無常、苦、空、非我」と言われても分かりにくいので、外界の音についての図を用意しました。音は一瞬で消えてしまいますが、脳内には「声受陰」として「苦、楽、不苦不楽」受が残ります。

 

③ 法(心)の三事和合(意、法、意識)

心や霊的な働きかけは、心のセンサーである「意」で捉えられ、「意識」と反応して「法」、「法陰」、「法受陰」を生じ、「苦、楽、不苦不楽」となり表面意識に上がります。

 

わたくし達はこの三事和合の反応が自分(我)であるとして、「苦」しみからの脱出を願います。あるいは自身の欲望がかなっている「楽」の状態を保ちたいという願いを持つのですが、この欲望は時間の経過と共に、やがて苦に変化してしまうので、楽も苦となってしまうのです。

このことに気づいて、この三事和合から離れ、正しく思惟して、解脱に向かうことが大切です。雑阿含経74『覚経』には「無明の触滅し、明触の覚起こる」として三事和合による無明の触による反応が無くなり、明触の覚(受)が生じることが説かれています。

三事和合により、脳にデフォルトで生じている苦を観察し、これを「溢れるような慈愛の心」に書き換え、苦や楽の反応から脱し、無条件に慈しみの心が生じるようにプログラムを書き換えることです。これにより明触の覚が生じることになります。

合掌

20240130
20251126に改定

 

 

 

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