歴史図書社『不動尊と護摩秘法』 高井觀海より不動明王と俱利伽羅龍王の抜粋である。
①『倶利伽羅大流勝外道伏陀羅尼経』では、色界頂きに於いて不動明王と外道と対論せる時、明王変じて智火の剣となる。外道の上首もまた智火の剣なった。時に不動明王の智火剣は、倶利伽羅大龍に変じて、外道の智火剣を呑まんとし、口より気をだすや、二万億の雷が一時に鳴るが如く、外道魔王はこれを聞いて、悪疑邪執を捨てた、という因縁を説いている。
②『倶利伽羅龍王儀軌』には、大日変じて不動となり、不動変じて剣となり、剣の上にア字あり、龍王となるといる。これによれば、不動の智剣変じて倶利伽羅龍王となれることを説いている。但しその形像については、かの『説倶利伽羅龍王像伝』に「もし人の相をなさば、面目喜怒、遍身甲冑、猶はビルバクシャ王の如し。」と説いているから、倶利伽羅像は、龍心呑剣の形像の他に、別に人形の倶利伽羅像を作ることを説く。しかし実際には、この人形の倶利伽羅像は殆ど見当たらないようである。多くの倶利伽羅剣は、剣に大龍がまとい、その剣を呑む相貌を成しているのである。俗にこれを倶利伽羅不動と称している。略
③『覚禅鈔』下巻には、倶利伽羅は生界にして、剣は仏界を指す。われら衆生の身中に、智剣を呑みて、生仏不二の深旨を示したものであると、種々深い解釈があるが、つまり倶利伽羅剣は、不動明王の三昧耶形である。